「不登校の子どもを持つ家庭を金銭的に支援する保険が登場したらしいけど、どんな内容なの?」
「条件が厳しいって本当?」「そもそも、なぜこんな保険が?」
「ネットでは賛否両論あるみたいだけど、どういうこと?」
2025年4月、損害保険ジャパン(以下、損保ジャパン)が、不登校の児童生徒を持つ保護者への支援を目的とした新しい保険「復学支援見舞金補償保険」の販売を開始しました。
これは損害保険業界初の試みであり、全国に先駆けて愛媛県松山市の小中学校PTA連合会が契約したことで、大きな注目を集めています。
しかし、この新しい保険については、「画期的だ」という声がある一方で、「不公平ではないか」「悪用されないか」といった懸念の声も上がっています。
この記事では、損保ジャパンの「復学支援見舞金補償保険」について、具体的な補償内容や条件、開発された背景、そして寄せられている様々な声まで、詳しく解説していきます。
損保ジャパン「復学支援見舞金補償保険」の概要
まずは、この保険がどのようなものなのか、基本的な情報を見ていきましょう。
目的:復学支援と学びの機会確保を後押し
この保険は、近年増加している不登校の児童生徒(小・中学生)が、再び学校に通ったり、フリースクールなどの多様な学びの場で学んだりする機会を確保することを、金銭面からサポートすることを目的としています。
文部科学省の調査によると、令和5年度の小中学校における不登校児童生徒数は約34万人と過去最多を更新しており、そのうち約4割が学校内外で支援を受けられていないというデータもあります。
保護者にとっては精神的な負担に加え、カウンセリング費用やフリースクールの月謝など、経済的な負担も大きな課題となっています。
(参考:文部科学省 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査)
契約者と対象者
- 契約者(保険に入る人):自治体、学校、PTA など
- 補償の対象となる人:契約団体に所属する小学校1年生~中学校3年生(満6歳~満15歳)の児童生徒
ポイントは、個人(保護者)が直接契約する保険ではないという点です。
PTAや自治体などが団体として契約し、その団体に所属する子どもが対象となります。
補償内容:見舞金10万円
対象となる児童生徒が、以下の2つの条件を満たした場合、契約者(PTAなど)を通じて、その保護者に対して10万円の見舞金が支払われます。(支払い回数は小・中学校それぞれで1回限り)
- 文部科学省が定める「不登校」の定義を満たすこと
- 「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者。ただし、病気や経済的な理由によるものを除く」
- 学校に所属するスクールカウンセラーや相談員などへの専門的な相談を行っていること
この見舞金は、復学に向けたカウンセリング費用や、フリースクールの入会金・授業料、オンライン学習の費用などに充てられることが想定されています。
重要な注意点:
- 年間30日以上の欠席があっても、それが病気や経済的な理由の場合は対象外です。
- 単に休んでいるだけでなく、専門家への相談という行動が要件に含まれています。
なぜこの保険が生まれたのか? 社会的背景
損保ジャパンがこの保険を開発した背景には、深刻化する不登校問題があります。
- 不登校児童生徒数の増加:前述の通り、小中学生の不登校は約34万人と過去最多で、10年連続で増加しています。
- 支援を受けられていない子どもの存在:不登校の子どものうち約4割が、学校内外の専門機関等で相談・指導を受けていないという実態があります。
- 保護者の負担:子どもの不登校は、保護者にとって精神的なストレスだけでなく、代替の学びの場を探すための情報収集や費用負担といった経済的なプレッシャーも伴います。
- 学びの選択肢の多様化:近年、フリースクールやオンライン学習など、学校以外の学びの選択肢が増えています。
- 国の不登校対策(COCOLOプラン):文部科学省も「誰一人取り残されない学びの保障」を目指し、不登校対策(COCOLOプラン)を推進しており、多様な学びの場や支援の重要性を強調しています。
こうした状況を踏まえ、損保ジャパンは、子どもたちの多様な学びの選択肢を経済的に後押しし、保護者の負担を少しでも軽減することを目指して、この保険を開発しました。
(参考:文部科学省 不登校対策(COCOLO プラン等)について)
世間の反応は? 賛成・反対・疑問の声
業界初の試みということもあり、この保険に対する世間の反応は様々です。
ニュース記事に寄せられたコメントなどから、主な意見をまとめました。
懸念・批判的な意見
- 公平性への疑問:「毎日頑張って通っている子がいるのに、不登校の子だけ支援されるのは不公平では?」「真面目に通うことが損に感じる」
- 悪用・モラルハザードの懸念:「見舞金目当てで不登校にさせる親が出てくるのでは?」「保険金詐欺のようなことが起きないか心配」
- 原因に応じた支援の必要性:「いじめが原因の場合など、理由によって支援を手厚くすべきでは?」「一律10万円で解決する問題なのか」
- 保険会社の利益追求?:「何でもお金儲けの種にするのか」「損保ジャパンは過去に問題もあったし(ビッグモーター問題など)、信用できるのか」
- 支援金の使途への不安:「本当に子どものために使われるのか」「どこかに流れてしまうのでは」
特に、「頑張って通っている子との公平性」や「悪用される可能性」を心配する声が多く見られました。
肯定的な意見・期待
- 保護者の経済的・精神的負担軽減への期待:「フリースクールなどは費用がかかるので、少しでも助かる家庭はあるはず」「悩んでいる保護者への一つの選択肢になる」
- 社会課題解決への一歩:「不登校問題という大きな課題に、民間企業が取り組む意義は大きい」「これを機に支援の輪が広がれば」
- 時代の変化への対応:「不登校が増えている現状に対応した、必要な保険なのかもしれない」
疑問点
- 加入条件:「すでに不登校の子どもがいるPTAは加入できるのか?」
- 発案者:「これは損保ジャパンと松山市PTA、どちらが発案したのか?」
よくある質問 Q&A
Q1. 個人でこの保険に加入できますか?
A1. いいえ、できません。この保険は、自治体、学校、PTAなどが団体として契約するものです。
Q2. 子どもがすでに不登校なのですが、見舞金はもらえますか?
A2. 見舞金が支払われるのは、所属するPTAなどがこの保険に加入した後で、かつ定められた条件(年間30日以上の欠席、専門家への相談など)を満たした場合になります。契約前に発生していた不登校が直接の支払い対象になるかは、契約内容や条件を満たした時期によりますので、所属団体にご確認ください。
Q3. 見舞金10万円は何に使えますか?使い道のチェックはありますか?
A3. 見舞金は、カウンセリング費用やフリースクールの費用などに充てることが想定されています。損保ジャパンの公式情報では、使途の厳密な追跡に関する記載は現時点で見当たりません。しかし、PTAなどの契約団体を通じて支払われるため、一定の透明性は確保されると考えられます。
Q4. なぜ「病気や経済的な理由」による欠席は対象外なのですか?
A4. この保険は、文部科学省の不登校の定義に基づいています。文科省の定義では、「病気や経済的な理由」による長期欠席は「不登校」とは区別されています。そのため、保険の対象からも除外されています。
Q5. 悪用を防ぐ仕組みはありますか?
A5. 支払い要件として、単に「年間30日以上欠席」だけでなく、「学校のスクールカウンセラー等への専門的相談」が必須とされています。これにより、安易な見舞金目的の欠席を防ぐ狙いがあると考えられます。また、支払い回数も小・中で各1回と制限されています。
まとめ:不登校支援の新たな選択肢、今後の動向に注目
損保ジャパンが新たに開始した「復学支援見舞金補償保険」は、増加する不登校児童生徒と、その保護者が抱える経済的・精神的な負担を軽減するための一つの試みです。
- 内容:PTAなどが契約し、条件を満たした不登校児童生徒の保護者に10万円の見舞金を支給。
- 条件:①年間30日以上の欠席(病気・経済理由除く)、②専門家への相談。
- 背景:不登校の増加、保護者の負担、学びの多様化。
- 反応:支援への期待がある一方、公平性や悪用への懸念も。
松山市PTA連合会が全国に先駆けて契約したことで、今後、他の自治体やPTAがどのように判断し、この保険がどれだけ広がっていくのか注目されます。また、実際に運用される中で、当初の目的通りに機能するのか、懸念されている問題点はクリアできるのか、検証していく必要があります。
この保険が、困難な状況にある子どもたちと保護者にとって、本当に意味のある支援となることを期待したいですね。
コメント