2025年5月11日(日)に放送されたNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の第18回「歌麿よ、見徳(みるがとく)は一炊夢(いっすいのゆめ)」。
この日の放送では、番組冒頭に「番組の一部に性の表現があります」という異例の注意喚起テロップが表示され、視聴者の間で大きな話題となりました。
「一体何が描かれるのか?」「なぜ今、このような注意喚起が?」SNSでは様々な声が飛び交い、その内容に注目が集まりました。
この記事では、なぜ「べらぼう」がこのタイミングで「性の表現」に関する注意喚起を行ったのか、その理由と背景、そして視聴者の反応を詳しく解説します。
※本記事は「べらぼう」第18回の具体的な内容に触れています。ネタバレを避けたい方はご注意ください。
衝撃の第18回、「性の表現」とは具体的に何だったのか?
多くの視聴者が固唾をのんで見守った第18回。注意喚起の対象となった「性の表現」は、主に二つのエピソードに集約されていました。
喜多川歌麿(唐丸)の壮絶すぎる過去
一つは、染谷将太さん演じる絵師・喜多川歌麿(幼名:唐丸、後に捨吉)の衝撃的な過去です。
蔦屋重三郎(横浜流星さん)が探し当てた唐丸は、かつての仲間ではなく、捨吉と名乗り男女問わず体を売って暮らしていました。
彼が自暴自棄な生活を送る理由は、幼少期の壮絶な体験にありました。
- 母親は夜鷹(街娼)で、望まれずに生まれた子であったこと。
- 人別(戸籍)もなく、七つを過ぎると客を取らされていたこと。
この「七つで客を取らされていた」という描写は、児童への性的虐待という非常に重い内容であり、SNSでは「七つって…」「うそだろ?」「酷い…」「壮絶」「地獄」「ここまで掘り下げるのか」「これは注意テロップ必要だわ」といった悲痛な声が多数上がりました。
この過酷な過去が、歌麿という人物を形成する上で重要な要素として描かれたのです。
朋誠堂喜三二の「腎虚」とファンタジックな悪夢
もう一つは、尾美としのりさん演じる朋誠堂喜三二のエピソード。
吉原での「居続け」(連泊)を条件に新作執筆に励むも、腎虚(男性特有の病)に見舞われてしまいます。
筆が進まない喜三二が見た悪夢では、体のとある部位が大蛇に化けて暴れまわり、それを斬り落とされそうになるという、CGを駆使したファンタジックかつコミカルな描写がなされました。
これもまた、直接的な性行為の描写ではないものの、性に関連するテーマを扱った表現と言えるでしょう。
なぜ今、このような表現と注意喚起が行われたのか?その理由と背景
では、なぜ「べらぼう」制作陣は、このタイミングでこのような踏み込んだ表現と、異例の注意喚起に踏み切ったのでしょうか。そこにはいくつかの理由と背景が考えられます。
1. 作品のテーマ性とリアリティの追求:「吉原」を描くということ
「べらぼう」は、”江戸のメディア王”と称される蔦屋重三郎の生涯を描く作品です。
彼が活躍した江戸時代の文化の中心地の一つが吉原であり、そこは華やかさの裏に多くの女性たちの過酷な現実や、性の問題が渦巻く場所でした。
視聴者コメントにもあるように、「見解主題として吉原遊廓を選んだ以上、いろいろと性的な表現を含めて描いていかないとむしろきちんと問題を描けないという、演出側の考えがあってのことではないでしょうか」という意見は、制作陣の意図を的確に捉えていると言えるでしょう。
また、脚本を手掛けるのは、「おんな城主 直虎」や「大奥」など、これまでも人間の業や社会の暗部に深く切り込んできた森下佳子さんです。
彼女の作風からしても、江戸の光と影をリアルに描こうとする姿勢がうかがえます。
実際、「べらぼう」初回では、亡くなった女郎たちが投込寺で着物をはぎ取られ全裸で重なる姿が物議を醸したこともあり、本作が一貫して江戸の厳しい現実を描こうとしていることが分かります。
2. 歴史の暗部への切り込みと現代への問いかけ
唐丸の過去は、当時の社会における弱者の搾取、特に児童虐待という今日にも通じる深刻な問題を描き出しています。
単にショッキングな描写に留まらず、そうした過酷な運命を背負った人間が、いかにして才能を開花させていくのか、というドラマの核心に繋がる重要な布石です。
視聴者からは「今回のNHKは現代へのアンチテーゼなのか攻めていますね」という声も上がっており、過去の出来事を通して現代社会が抱える問題にも目を向けさせようという意図が感じられます。
また、「七五三で娘に花魁ふうの着付けをする親御さんとか…無知がいかに自分を恥ずかしめるものか…この大河はそういう方達に知識を広めるという意味でも良いお手本になる」といった、歴史を正しく知ることの重要性を指摘するコメントも見られました。
3. 視聴者への配慮と放送倫理
大河ドラマは日曜よる8時という、家族で視聴することも多い時間帯に放送されています。
特に今回は児童虐待という極めてセンシティブな内容を含むため、事前に注意喚起を行うことで、視聴者が心の準備をしたり、子どもへの影響を考慮したりする時間を与える必要があったと考えられます。
「夜8時台となると、子供も観るドラマですから、注意が必要でしょう」というコメントにもあるように、制作側としての配慮と、放送倫理に基づいた判断と言えるでしょう。
また、本作ではインティマシーコーディネーターの浅田智穂さんが参加しており、性的なシーンの撮影において俳優の心身の安全を守りつつ、演出意図を的確に表現するための環境づくりがなされていることも、こうした表現を可能にした一因かもしれません。
視聴者のリアルな反応:「衝撃」と「理解」が交錯
今回の異例の注意喚起と放送内容に対し、SNSでは様々な反応が見られました。
- 驚きと戸惑い:「NHK大河にこのテロップが流れる時代が来るのか…」「何事ぉ?て驚いた」「冒頭のテロップで構えたけど…」
- 内容への衝撃:「七つって…」「うそだろ?」「酷い…」「壮絶」「地獄」といった唐丸の過去に対する悲痛な声。
- 注意喚起への理解:「これは注意テロップ必要だわ」「ここまで掘り下げるのか」と、内容の重さから注意喚起の必要性に納得する声。
- 制作陣の姿勢への評価:「吉原を描くのに、綺麗な描写しかないのも本気度に欠けると思うし、今回は比喩的に大蛇を出したり上手い演出だなと笑ってしまいました」「べらぼうは今までにない大河の画面を見せられて、大変面白いです」など、踏み込んだ描写や演出を評価する声。
- 物語への没入と感動:「唐丸、辛かったね…。蔦重と再開できて、本当に良かった」「これからの歌麿としての活躍が楽しみ」「前半はコメディ、後半は涙なしでは見られないエピソード。43分でこれだけ堪能できるなんてあまりにも贅沢」と、キャラクターの行く末を案じ、物語に引き込まれる視聴者。
総じて、ショッキングな内容に驚きつつも、物語の深みやリアリティを追求する制作陣の意図を理解し、評価する声が多く見受けられました。
「カラッとした下ネタと陰惨な児童虐待が同じ話でまとめられるとは…本当に毎回脚本が凄い」といった、脚本や構成力を称賛する声も印象的です。
まとめ:攻める大河「べらぼう」、江戸のリアルを描く覚悟とは?
大河ドラマ「べらぼう」第18回における「性の表現」に関する異例の注意喚起は、作品が描こうとする江戸時代のリアル、特に吉原という特殊な世界の光と影、そしてそこに生きる人々の過酷な運命に深く踏み込む制作陣の「覚悟」の表れと言えるでしょう。
唐丸(歌麿)の壮絶な過去は、後の彼の芸術性にどう影響していくのか、今後の展開から目が離せません。
今回の注意喚起は、視聴者に衝撃を与えつつも、作品のテーマ性や歴史の暗部を描くことの意義を問いかけるものでした。
賛否両論を含め、これほどまでに視聴者の心を揺さぶり、議論を巻き起こす力を持つ「べらぼう」。今後の展開にも、大きな注目が集まります。
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